NO-MA ARCHIVE(ノマ アーカイヴ)

Web記事
2006.1
ボーダレスという視点-1

はたよしこ(ボーダレス・アートミュージアムNO-MAアートディレクター、絵本作家)

この文章は、NO-MA旧サイト(2005~2012年)の「NO-MAを語ろう」ページに寄稿いただいたものです。原稿は2006年のもので、肩書は執筆当時のまま掲載しています。

このギャラリーでは障害の有無を超え、作品を通じて、人が持つ表現へのエネルギーが交差する、新しいアートの場所をめざしています。
人は表現をしなくても死ぬわけではありません。しかし、有史以来を眺めても、人はものを作ったり表現行為をすることを決して手放さないでいるのです。たとえそれが何の役に立たなくても、また他者に見られる事がまるで無くても、人は惜しげもなく膨大なエネルギーをそこに注ぐ事ができるのです。
「障害者」という言葉があります。「アーティスト」という言葉があります。
それぞれに社会の中での位置や属するシステムは確かに違います。しかしそんな区分を飛び越えて「表現者個人」というフィールドでとらえると、通底する何かがありありと見えるのです。そしておもしろいことに、そこにはアートを楽しむ要である「人間の多様な快楽の有りよう」が、ずいぶんまっすぐに見えてきてしまうのです。
こういう視点から捉えると、「障害者福祉」という大切だけどどこか他人事のような垣根も、楽しい抜け穴が見つけられてスイスイと色々な人が通れます。
私も絵本作家との2足の草鞋で障害者福祉の世界とつき合って来て15年。2001年に東京と横浜で服部正氏(兵庫県立美術館学芸員・NO-MA運営委員)他数人の友達と立ち上げた初めてのボーダレスアートの展覧会「21世紀アートのエネルギーをみる」から5年になります。
当時2000年に水戸芸術館で開かれた椹木野衣氏(美術評論家)のキュレーションによる「日本ゼロ年」展は、美術を考える上で私に多くの示唆を与えてくれました。その水戸芸術館で2006年夏には若い学芸員による企画展「ライフ」というボーダレスな展覧会が開かれ、5人の障害者の作品が出展されます。2005年には、大阪の国立民族学博物館でもブリコラージュというテーマの元に「きのうよりワクワクしてきた」というボーダレスな企画展が開かれ8人の障害者の作品が出展されました。いずれも私も企画に関わりましたが、企画発案者は館のスタッフです。
多様性を極め過ぎ、肝心の必然的生命力を失いかけているアートシーンにとっては自然な方向性ともいえるのかもしれません。
そういった視点から見ても、今後アウトサイダーとインサイダーの枠組みを超えたボーダレスな展覧会の企画は、少しずつ増えていくと思います。
NO-MAがこの先駆けを志向してゆくような面白い展覧会をこれからもひらいていきたいと思っています。

出典:NO-MA旧サイト(2005~2012)「NO-MAを語ろう」(2006年01月18日公開)

ページのトップへ戻る