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作品調査

西本 政敏NISHIMOTO Masatoshi

1976年生まれ 北海道在住

《バス》 

2005年 64×217×61 木、絵具、プラ版、シール

《トラック》

2004年 89×334×55 木、絵の具、プラ版

制作中の「バス」。 車体に窓枠のパーツが綺麗に埋め込まれている。

バスなどの平面図

制作場所。様々な部材が積み重なる。

《うめみやまさこさん》

2008年 351×90×47 木材、絵の具、糸

制作中の女性像の頭部

近年、制作された女性像。立像になっており、髪の毛も木でできている。

「女の子」の平面。

※以下の文章は、「滋賀県アール・ブリュット全国作品調査研究」令和4年度報告書から抜粋したものです。

 西本は木材を使って、バスや女性像などを、長年制作している。子供のころから制作は好きで、元々は厚紙を組み立ててバスを作っていた。「木」という素材に出会ったのは高校卒業後。社会福祉法人草の実会が運営する、木製品を製作する作業所「草の実工房もく」に通い始めてからであった。そこでは西本の手先の器用さを買われ、糸鋸を扱うようになった。加工技術を身に付け、自身の制作にも生かしていったわけだ。通い始めて1年経った頃、一時は別の会社に就職したが、草の実工房もくの環境が西本に合っているという理由で、2年半後に再び戻ることになった。それ以降、木材の扱いがさらに上達し、多数の作品を制作。それらが美術関係者の目に留まり、国内外の展覧会で展示されるなど、多方面で注目を集めていった。
 西本が安定した制作を続けられるのは、職場と自宅という異なる環境をうまく使いわけているからである。作品のフォルムになる木材は、全て作業所で出る廃材を利用するので、材料には事欠かない。また、作業所では、休み時間なら自由に糸鋸が使えるので、作品の部品を成型することができる。作られた部品は自宅に持ち帰り、彼の自室で塗装や加工、組み立て作業が行われる、というサイクルが持続可能な制作を支えている。
 西本が作るバスは、札幌市内を走る車体がモデルである。引っ越しをしてから乗車機会は減ったが、以前は、作業所に通う時に市内のバスを乗り継いでいたとのことで、その際、乗ったり見たりしたバスを再現しているとのことだ。幅25cm程度の大きさの作品は精巧で、西本の職人的な気質も垣間見える。車体の曲面も正確に表現し、窓枠にはぴったりと木枠を埋め込み、さらにプラスチックの板もはめている。外側にはロゴや広告も再現し、内部にはシートを一つひとつ作り、かつ模様も描くなど、徹底した細部へのこだわりを感じさせる。バスの他にもトラックやパトカーなども制作しており、これらも同様に完成度が高い。
 また、異性への関心から始まったという人形制作においても、バスの作品と同様、西本の確かな技術が遺憾なく反映されている。モデルとなるのは、タレント、アニメのキャラクター、偶然すれ違った人など。立像も制作するが、関節が曲がるように工夫が施された、複雑な構造の人形も多数制作している。頭部の髪の毛の表現方法は特に独創的である。いくつもの穴の開いた部材をくっつけ頭部の骨格を作り、その穴に糸を通す。その後、仕上げとして部材の隙間には紙粘土を詰め、塗装することで、まるで地肌から髪の毛が生えているかのようなリアリティを生み出している。
 西本の部屋には女性シリーズの絵やバスなどの部材を平面的に表したものもたくさんあった。平面にも起こし、いくつもの作品は同時進行で少しずつ形作られていくのだろう。制作に必要な部材が積み重なった西本の部屋は、さながら彼の頭の中にある世界が具現化した製造工場のようであった。(横井 悠/ボーダレス・アートミュージアムNO-MA学芸員【執筆当時】)

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