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土谷紘加さん

作品調査

土谷 紘加TSUCHITANI Hiroka

1997年生まれ 大阪府在住 アトリエ子―ナス所属

土谷作品01
「COLORNY」アイロンビーズ

2015年 140×138

土谷作品02
「COLORNY」アイロンビーズ

2015年 153×180

土谷作品03
「COLORNY」アイロンビーズ

2015年 153×160

土谷作品04
「COLORNY」アイロンビーズ

2017年 185×155

土谷作品05
「COLORNY」アイロンビーズ

2017年 143×144

土谷作品06
「COLORNY」アイロンビーズ

2015年 140×140

土谷作品07
「COLORNY」アイロンビーズ

2017年 141×143

土谷作品08
「COLORNY」アイロンビーズ

2017年 140×140

土谷作品09
「COLORNY」アイロンビーズ

2017年 162×155

土谷作品10
「COLORNY-日記-」アイロンビーズ

2018年 150×160 画像提供:アトリエコーナス

土谷作品11
「COLORNY-日記-」アイロンビーズ

2018年 143×145 画像提供:アトリエコーナス

土谷作品12
「COLORNY-日記-」アイロンビーズ

2018年 143×155 画像提供:アトリエコーナス

※以下の文章は、「滋賀県アール・ブリュット全国作品調査研究」令和2年度報告書から抜粋したものです。

 小さなスクエアの画面から鮮やかな色彩が溢れ出す。これらはアイロンビーズと呼ばれるプラスチック素材でできたオブジェである。アイロンビーズはビーズの穴をプレート(板状の型)の突起にはめ込み、アイロンの熱で溶かして圧着する。土谷は2015年に支援学校卒業後コーナスに入所、以来1日3~5個のペースでこれらのアイロンビーズ作品を作り続けている。学生時代に作った経験があったらしく当初から手際よく制作し始めた。一般的な手芸品としてはドットで描いた下絵模様に合わせてビーズを並べ均一に圧着させるものだが、土谷はこの素材を独自の感性で自在に操る。
 彼女が使用するのは主に14×14cmのプレート。下絵やスケッチは一切書かない。普段は右利きであるがこのときだけ左手で細かいビーズをリズミカルに置いていく。色の選択に迷いはない。基本的にピンク、ブルーなどの鮮やかな色を好むが、淡いパステルカラー、黒や茶なども偏りなく使う。作品には2~3色だけの大胆なコンポジションもあれば、いくつかの色をモザイク状に配したもの、また1色の中にポツンと1粒だけ違う色を置いたものや、ビーズを置かない隙間(窓)部分を残したものもあり、実に多彩だ。市販されるアイロンビーズ自体の色も彼女が制作を始めた当初よりどんどん増え、さらに作品のバリエーションが増している。
 ビーズを配置し終わるとオーブンシートを当ててアイロンをかける。このときのアイロンのかけ方によってビーズの溶け具合が違ってくる。普通に均一に熱を加えればそれぞれの粒がそのまま繋がったドット状の面になるが、強く圧をかけるとビーズの穴は潰れて広がり、粒の境目のない面ができる。土谷はこの圧のかけ方と押し当てる時間を変えてさまざまな面の表情を創り出す。部分的に盛り上げたり、波打たせたり、手指のように巧みにアイロンを使いこなす。端を反らせたもの、外縁部のビーズをプレートから逸脱させたものなどもありその表現は限りない。スタッフによると彼女はこれらのアイロンの使い方を偶然ではなくほぼ意図的に行っているとのことである。
 周囲は彼女の作品を一種の日記と捉えている。日々の経験や、うれしいとき、イライラしているとき、穏やかなときなどの内面の変化が、その日そのときの色と形に表出する。単純に明るい気分のときは明るい色というようなものではなく、もっと深いところの微かで曖昧な気持ちの流れを自らの手で掬い上げているのかもしれない。ひとつひとつの色の選択は必然で、隅っこの小さな一粒の色もなくてはならぬ彼女の一部分なのだろう。それらは彼女の生きる時間の軌跡として、美しく確実に積み重ねられていく。
 ビーズを並べる、アイロンをかける、いずれの工程も集中してスピーディかつ丁寧に行われる。途中で時折確かめるように匂いを嗅いだり、軽く叩いて音を聞いたりしている。
 スタッフは「職人のようにテキパキと自分ですべてされるので、私たちはビーズの調達以外にすることがないんです」と笑うが、土谷が自分の創作自体に囚われて追い込まれていくことがないよう、常に気を配って見守っている。(熊谷眞由美)

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