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黒河修介さん

作品調査

黒河 修介KUROKAWA Shusuke

1994年生まれ 宮崎県在住

黒河作品01
《むしまるQ》

2002年 150×150 紙、ペン

黒河作品02
《霧島温泉ソサエティ》

2004年 210×297 紙、鉛筆

黒河作品04
無題

2021年 297×210 紙、鉛筆

黒河作品04
《むしまるQ》

2021年 297×210 紙、鉛筆、色鉛筆

黒河作品05
《むしまるQ》(一部拡大)

2021年 297×210 紙、鉛筆、色鉛筆

黒河作品06
《友達》

2021年 297×210 紙、鉛筆、色鉛筆

※以下の文章は、「滋賀県アール・ブリュット全国作品調査研究」令和3年度報告書から抜粋したものです。

 黒河は、毎日午後3時30分に帰宅して、洗濯物の取り込みやお風呂洗いなどを終えてから、リビングにあるテーブルの定位置で制作に取り組んでいる。文字は本来、伝えたいことの意味をもって書かれるものだが、黒河の作品はその文字(のサイズやフォルムや、濃淡)が群れをなして、1枚の紙という画面のなかで構成することに意味があるようだ。
 シャープペンシルを歯で噛み、芯先を尖らせて、線をメインにして絵を描くという手法は、幼少期から変わっていない。当時描かれていたものは、黒河の気に入っているテレビ番組のキャラクターである。「むしまるQ」(NHKの子ども向け番組『なんでもQ』の第3シリーズ・1997年~1999年)や「でこぼこフレンズ」(NHKの幼児向け番組『おかあさんといっしょ』のコーナー・2002年~2011年)に夢中であった。特に「むしまるQ」については、現在も継続して作品に表している。番組中に出てくるクイズの内容(主にクイズの回答や番組内で流れる曲名)を文字のみで構成し羅列する表現(仮に「文字の羅列シリーズ」と呼称する)を始めたのもこの頃であった。1行に描かれている内容は概ね、「通し番号・放送日・出題するキャラクター・挿入歌題名・挿入歌歌手名」の順である。
 この表現を始めたころの字のサイズは誰にでも容易に読めるものであったが、その後、年々小さくなっていく。また同時期に、特にうれしかった出来事に関するワードを繰り返し羅列したり、「むしまるQ」の番組の一場面を3cm角ほどの漫画のコマ状の四角い枠の中に描く表現(仮に「コマ絵シリーズ」と呼称する)を開始し、文字量は次第に増えていった。また、新聞の折り込みチラシの裏面の左上部分に、4つのキャラクターを選んで描くことを、継続して行うこともあった。配置は決まっており、左上部分以外はすべて余白のままである。
 小学6年生のころには紙1枚あたりに描かれるコマの数量が増え、15個ほどが配置されている。このころになると、コマの形は同じ大きさに整い、縦線はわずかに左斜めに傾いている。文字の羅列シリーズの文字量も増え、一行の線が左から右に進むにつれてなだらかに下降していく。改行されるごとにわずかに左側にスペースを空けてから書きはじめる。そうした独自のルールが生まれた結果、画面左下部分に三角形の余白が現れている。
 16歳のころに、極端に線が細く薄くなり、段落出だしのずれ方にゆらぎが現れている。挿入歌題名は、何度も書き直し位置を変更している痕跡があり、配置へのこだわりが窺える。
 昨年、日中通所している事業所の仲間たちを描いた作品は、シャープペンシルと色鉛筆で描かれている。モデルの髪型や顔の形などの特徴を捉えつつ、黒河の持ち味が発揮されている。色を塗るというより、線を描き重ねて面をつくっている。それは、これまでの文字の塊で線をつくる行為にも似た繊細さがある。
 近年のコマ絵シリーズでは、2つの丸が繋がった形などこれまでとは異なるコマが現れ、キャラクターが不在のコマも確認できる。黒河の作品は潔く、その潔さが儚い。(青井美保/高鍋町美術館学芸員)

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