
作品調査
篠田 慎SHINODA Shin
1990年生まれ 岐阜県在住
※以下の文章は、滋賀県アール・ブリュット全国作品調査研究令和7年度報告書から抜粋したものです。
それは作品というよりも物置の奥にごちゃごちゃに積み上げられた糸くずの中から引き揚げられた、糸が絡まって塊になった物のように見えた。
糸をまく行為。この行為に篠田は夢中になった。
以前の事業所では、ミシンや織りの作業を糸に囲まれた環境の中で行っていた。支持や注文の仕事にはあまり実が入らなかったようで、仕事の合間に、好きな職員と糸で作った球でキャッチボールをするのも楽しみで、さらに、椅子やドアノブ、机、机の脚など、あちこちに、さき織りの紐を巻く行為にいつの間にか夢中になっていた。座っている人の足と足をつなぐように巻いたり、気になる職員の脚と椅子を巻きつけたりして、反応を楽しんでいたそうだ。現在通っている新しい事業所はアートを柱にすえていて、本人が関心のある創作や表現活動に取り組ませてくれる。ここに移ってからは、自分のペースで織りの作業と創作を織り交ぜながら自由に取り組んでいる。
作品として保存されているものは、いつも使っているリュックやハンガー、木の枝、糸巻器の部品、ほうき、段ボール箱、木箱などに糸や紐が巻き付いているものである。リュックは紐を巻いたまま使用していて、中にはお気に入りのお菓子などが入っているそうだ。紐を巻いた作品として飾っておくものも、自分の持ち物として使用するものも、分け隔てなく、気になるものには紐が巻かれる。
糸だけでなく、様々な太さ、模様の紐が使われている。綿の紐。組紐。麻紐。ちり緬。ポリエステル紐、カラーテープ。アクリル紐。丸紐。平紐。袋紐。タフロープ、etc。巻かれる物、巻かれる箇所、見える面によって、材料の選択に違いがあり、与える印象が変わる。人と人をつなぐ行為から始まった表現は、ただ物を紐だらけのがんじがらめにするのではなく、その物が新しい召し物を羽織ったかのように、美しくなる工夫をするのだ。紐が織りなす色と形は、篠田のエネルギーや愛情を帯び、新しい力とオーラを解き放つ。そしてその紐の1本1本が、篠田が人とつながっている喜び、社会とつながっている楽しさを表しているようだ。
彼が今いる事業所の名前はアートフィールド。篠田にとって、のびのびと好きな表現に取り組める、理解と笑顔溢れる職員と仲間がいる恰好のフィールドになっている。まさに遊びをせんとや通いけむ、である。
(米田昌功 / 富山県障害者芸術活動支援センターばーと◎とやま代表・NPO法人障碍者アート支援工房COCOPELLI代表)
(主な展示歴)
1990年 岐阜市に生まれる
2021年 「第16回岐阜アートフォーラム」(上宮寺/岐阜市)
2022年 「生きるを彩る展」 (Gallery水の音/岐阜市)
2023年 「はじまりの美術展」(GALLERY teku+teku/岐阜市)
「ART FIELD所属作家セレクト展 The 1st~それぞれのhohaba〝歩幅〟~」(GALLERY teku+
teku/岐阜市) *以後毎回出品
「人権パネル展」(ぎふメディアコスモス/岐阜市) *以後毎回出品
「いろんなみんなの展覧会 虫が食む。」(清流文化プラザ TASCぎふ/岐阜市)
「第30回オンリーワンわたしたちの芸術祭」(ハートフルスクエアーG/岐阜市)※以後毎回出品
2024年 「いろんなみんなの展覧会~大地につどう。」(清流文化プラザ TASCぎふ/岐阜市)
2026年 「アートフィールド展」(呉café/岐阜県神戸町)





